豊能町すべてのこどもたちにプログラミングを
という、壮大な野望(!?)を抱いて、コツコツ、チョコチョコ活動しています。
令和元年度は、その第一歩として、豊能町の「トヨノノドリーム」事業に採択していただきました。
まずは、発達に凸凹のある子どもさんを中心に、プログラミングの輪を広げていきたいと思っています。
はじめまして。
大村みどりと申します。
大阪最北端の地、豊能郡で、小学生向けのプログラミング教室をしています。
と、いっても実は、ウチのプログラミング教室って、あまりプログラミングを教えていません。
子ども達が、自由に、のびのびと、コンピュータを使って自分のやりたいことをやる。
探求する、表現する、共有する。
そんな時間を過ごしています。
ガッツリ、プログラミングにハマる子もいるし、ワードやエクセルをする子もいる。
タイピングに熱中する子や、時間を忘れてお絵かきソフトに向かう子も。
パソコンでキーホルダーを作ったり、プラバン工作をやることもあります。
私は、それに寄り添い、見守り、ときにはサポートしたり、環境を整えたりする役目をしています。
学校に、塾に、おけいこごとに。
大人顔負けに、忙しい毎日を送っている子どもたち。
ここに来ている間は、何に追われることなく、ホッとできて、やりたいことができる。
そんな居場所になればいいなと思い、教室運営をしています。
「プログラミングだけを学ぶ教室ではありません」
今でこそ、大きな声でそう言っていますが、開校してから数か月は、とても悩んでいました。
プログラミングから興味がそれたり、カリキュラム通りに進めたがらない子どもさんが、何人かいらっしゃったからです。
親御さんは、けっして安いとは言えないお月謝を払って、大事なお子さんを預けてくださっているのだから
「もっともっとプログラミングをお教えしなければ!」
「決められたカリキュラム通りに進めなくては!!」
そんなふうに考えて、焦りまくりの毎日でした。
そこで、全国にいらっしゃる、他のプログラミング教室の先生方に相談したり
改めて、通ってくれている子ども達の、保護者の方の声をきかせていただいたりしました。
「他の習い事には行きたがらないのに、初めて息子が自分から通いたいと言った」
「学校には、なかなか行けていないけれど、教室へは毎回楽しみに通っている」
「自分のペースでできて、いつもほめてもらえるので、自分はプログラミングが得意だと自信を持つようになった」
「普段の授業では褒められることはないのに、ここではたくさん褒められて、プログラミングが大好きになった」
「プログラミングのある日はテンションが高い。毎日でも通いたいと言っている。」
「プログラミングの日は体力的に疲れているはずなのに、帰ってさっと宿題もできるので、息子スゴイ!」
たくさんの嬉しいお話しを聞かせていただいて、「シャカリキにカリキュラムだけを進める必要はないんだな」と気づくことができました。
また、そのころから、「この教室の本当の役割は、なんだろうな…」と考え始めるようにもなりました。
そして、親御さんのおはなしを伺うと、何人かの、発達凸凹さんがウチに来てくれていることもわかりました。
「みんなと同じように、決められたことをこなさないといけない場」では、しんどい思いをすることが多い子も、
自分のペースで、やりたいことが出来ると、がぜんイキイキと輝きだす。
一見、静かにしているように見える子も、内に秘めた創造性を爆発させている。
そんなことも、たくさん目の当たりにしました。
発達凸凹さんとプログラミング
例えば、ADHDの診断を受けているけんと君。
けんと君は、学校生活にもなじみにくく、塾や習い事にも通いたがらなかったそうです。
大好きなお絵かきのワークショップに出かけても、気に入った色が表現できないと、かんしゃくをおこしたりして、お母さんが困ってしまうこともありました。
年の近い子ども達と、一緒の環境では難しいとの心配から、最初はマンツーマンでプログラミングにとりくみました。
けんと君は、とにかくアイディアマン。
色々な発想が浮かびます。
本や図鑑も大好きなので、とっても博識。そして、お絵かき上手です。
正直に言うと、プログラミングそのものには、まだ興味が薄いかもしれません。
それでも、彼は、パソコンの画面上に、自分の思い描く世界を表現することに夢中になっています。
そうして、「僕の作った世界」と「これから作ろうと思っている世界」のことを、たくさん、たくさん私に話してくれます。
時には、キャラクターの色が思ったように出せなかったり、上手く線が引けなかったり。
イライラしてしまうこともありますが、根気よく挑戦したり、「ま、いいか」と気持ちを切り替える術も身につけてきました。
今では、他のお友達と一緒にレッスンを受けられるようになり、学校へも少しずつ通い始めているようです。
アスペルガーのしょうた君は、礼儀正しく、おとなしい男の子。
必要なこと以外は、自分から声を出すことはありませんが、私の問いかけには、短い言葉で、時には、はにかんだ笑顔で応えてくれます。
初めて、ウチに来た時に「どこに座る?どこでも好きなところに座っていいよ。」と声をかけたら、ふしぎそうな顔をしていたのをよく覚えています。
でも、「やりたいようにやっていいんだ」と理解してからは、自分のペース配分で、コツコツと作品を作り続けています。
特にこだわりなく進めるところは、ササっと。
こだわる部分は、何時間も何か月もかけて、探究を続けます。
そうして作り上げた作品は、数学的センスが抜群で、それでいて芸術的です。
「こんにちは」「できました」「ありがとうございました。さようなら」
数少ない言葉でのコミュニケーションではありますが、どんどん力をつけていくしょうた君の後ろ姿を、頼もしく思いながら見守っています。
いちど、プログラミングに触れてみる
それぞれの子が、それぞれのやり方、それぞれのペースで、自分の「好き!」にとりくむ。
そうすることで、子ども達は、どんどん自分の可能性にチャレンジするようになりました。
そして、どの子の顔も、のびのび、イキイキしています。
そんな「診断を受けた」子ども達を見ていると、ふと感じることがありました。
ある種の発達障害をもつ子どもさんにとって、プログラミングはとても分かりやすくて、馴染みやすいものなんじゃないか?
・好きなことには、集中して取り組める
・あいまいな表現ではなく、決められた規則性のある命令を使う
・上から順に、ひとつずつ進めていく
私は、発達に関する専門家ではないので、詳しいことはわかりませんが、何か、ピンとくるものはありませんか?
もちろん、なかには「パソコンやプログラミングはどうしても苦手」というお子さんも、いらっしゃることでしょう。
「ウチの子に合うか合わないか、一度試してみよう」
そんな気軽な気持ちで、かまわないのです。
国語、数学、音楽、芸術、運動、その他たくさんある選択肢のひとつとして
プログラミングにも、いちど触れてみる機会を持ってもらえれば、
それが、もしお子さんの可能性を拡げるきっかけになれば、こんなに嬉しいことはありません。
2020年から小学校で教育必修化される「プログラミング」
小学校での教育必修化を来年に迎えた今、プログラミングやロボットを扱う教室は、全国的にすごい勢いで増え続けています。
でも、定型発達の子を持つ親御さんでも、「プログラミング教室に通わせる」ことは、まだ少しハードルが高く。
ましてや、「学校に行きたがらない」「塾に行きたがらない」「親も行かせづらい」と感じている発達凸凹さんには、ますます遠い存在なのではないかと思います。
でも、「この子の瞳も、きっともっと輝きだす」
それを知ってしまった私は、いてもたってもいられなくなりました。
決まったカリキュラム通りに進まなくてもかまわない
みんなと同じ答えじゃなくてもかまわない
子どもたちが、心から自由で安心に過ごすことができたなら、どれだけの能力や、創造性を発揮できるのか?
それを確かめられる場所が欲しくて、今の教室とはまた「別の形」を、模索しているところなのです。
※文中の子どもさんのお名前は、すべて仮名です。